試合の流れ
前半
ロベルト・デ・ゼルビ監督率いるトッテナムはこの試合、ドミニク・ソランケを今季リーグ戦初スタートに抜擢。移籍失敗に終わったブレナン・ジョンソンが驚くべきことにスタンドに姿を現す中、スパーズはキックオフから積極的な姿勢を見せた。
開始早々、ヤン・パウル・ファン・ヘッケがアンドルー・ロバートソンのフリーキックに合わせてボレーシュートを放つも枠を超える。続いてファン・ヘッケの精度の高いスルーパスがマテウス・フェルナンデスを抜け出させたが、フィニッシュに持ち込めなかった。アーチー・グレイとオマル・マルモーシュもシュートをブロックされるなど、スパーズが試合の主導権を握ってはいたものの、チャンスを確率に変えられないもどかしさが漂う。
その後、プレーが途切れたタイミングで流れが変わり、トッテナムは前半の勢いを維持できなかった。エバートンもジェームズ・ガーナーのストップタイムのフリーキックがアントニン・キンスキーのセーブで阻まれ、唯一の枠内シュートを記録。£1億のプライスタグが付くサンドロ・トナーリが中距離弾を試みる場面もあったが、前半は0-0で折り返した。
後半
後半の立ち上がりはエバートンが主導権を握った。50分、ティエルノ・バリーがキンスキーのキャッチミスを突いてヘディングシュートを放つが、GKの顔面に直撃するという珍場面でゴールを免れる。直後にバリーはジョンソンへのラストパスを選ばずタイリーク・ジョージへ展開、そのクロスをミッキー・ファン・デ・ベンがクリアするなど、エバートンが次々と好機を逃す場面が続いた。
デ・ゼルビ監督は63分にルーカス・ベルクヴァル、モハメド・クドゥス、マティス・テルを同時投入する大幅な交代策に打って出る。しかし75分、キルナン・デュースベリー=ホールのカットバックを受けたジョンソンが至近距離から枠を外す痛恨のミス。試合終了間際にはサヴィオのパスを受けたベルクヴァルが22ヤードの強烈な巻きシュートを放つも、ジョーダン・ピックフォードがワイドに弾き出し、スパーズのゴールは最後まで生まれなかった。
戦術分析
トッテナムの狙いと実行
デ・ゼルビ監督は攻撃的なポゼッションサッカーを志向しているが、4試合でリーグ無得点という数字がそのシステムの機能不全を如実に示している。前半はファン・ヘッケを含む最終ラインがビルドアップに参加し、トナーリとロドリゴ・ベンタンクールのダブルボランチが攻守をつなぐ形を取った。
右サイドのサヴィオはいくつか鋭い仕掛けを見せたものの、ファン・ヘッケが単騎で攻撃参加を試みる場面も目立ち、組織的な崩しよりも個の能力頼みの局面が多かった。最大の問題は1トップのソランケで、「試合勘の鈍さと体のキレ不足が露呈した」(BBC)と評されるなど、180分以上ゴールのないリーグ戦が続く核心にあった。後半の大量交代で局面打開を試みたが、特にクドゥスは試合に絡めず、チームとしての連動性を欠いた印象が残った。
デ・ゼルビ監督は試合後、「自信とフィジカルコンディションの両方が足りていない」と認めており、£3.8億以上を投じた大型補強がピッチ上の成果に結びついていない現状への苦悩を滲ませた。
エバートンの狙いと実行
デヴィッド・モイーズ監督は締め切り直前のカオスの末、夏の移籍市場で18人のアウトフィールドプレーヤーしか確保できなかったにもかかわらず、明確なブロック守備でスパーズの攻撃を無力化した。4-4-2ベースのコンパクトな陣形でスペースを消し、ジャラド・ブランスウェイトとジェームズ・タルコフスキーのセンターバックコンビが中央を封鎖。特にブランスウェイトは「試合最高のパフォーマンス」(BBC)と称され、序盤の決定的なブロックをはじめ終始安定感を見せた。
攻撃面ではデュースベリー=ホールが前線でテクニカルな絡みを見せ、ジョンソンとバリーに決定的チャンスを供給。ただし前線の選手の決定力不足により勝ち点3を逃した。最終ラインの選手層の薄さを考えれば、無失点の引き分けはモイーズ体制にとって机上の計算以上の成果といえる。
ターニングポイント
①50分:バリーの頭ではなくキンスキーの顔に当たったヘディング
GKキンスキーがクロスをファンブルした直後、バリーが無人のゴールへ向けてヘッダーを放ったが、倒れ込んだキンスキーの顔面に直撃。このシーンはエバートンが試合を通じてあと一歩の精度を欠いていたことの象徴であり、勝敗を分ける最大のジャンクションとなった。
②75分:ジョンソンの決定的外し
デュースベリー=ホールのカットバックを受けたジョンソンが、ほぼフリーの状態から枠外に蹴り込んだ場面は試合最大の山場だった。ここでエバートンが決めていれば試合展開は全く異なっていたが、「元所属クラブへのゴールはならなかった」という皮肉な結末に終わった。
選手評価
ジャラド・ブランスウェイト(エバートン、CB)
BBC評8点。試合最高評価に相応しい圧巻のパフォーマンス。序盤の決定的ブロックをはじめ、終始ソランケとマルモーシュを完封。
アーチー・グレイ(トッテナム、RB/MF)
BBC評7点。前線への積極的な推進力を発揮し、チームの攻撃参加を体現。今季スパーズの数少ない明るい材料の一つ。
サヴィオ(トッテナム、RW)
BBC評7点。右サイドでの突破でデュースベリー=ホールをギリギリで止めるなど守備貢献も光ったが、後半は徐々に存在感が薄れた。
ドミニク・ソランケ(トッテナム、CF)
BBC評4点。今季初スタートで「試合勘の鈍さ」を露呈。チームのゴール欠如の象徴的存在となり63分に退いた。
ジョーダン・ピックフォード(エバートン、GK)
BBC評7点。終了直前のベルクヴァルの巻きシュートを反応良くワイドに弾き、無失点を死守。エバートンの勝ち点1に貢献した。
この結果が意味するもの
トッテナムは第4節を終えて勝ち点2(17位)、リーグ4試合連続無得点という深刻な状況に陥っており、£3.8億超の大型補強が機能していないことへの批判は試合後のブーイングが示す通りだ。デ・ゼルビ監督への圧力は週を追うごとに増しており、システムの浸透か前線の立て直しか、抜本的な解決策が急務となっている。一方エバートンは3引き分け(勝ち点6)で無敗を継続。限られたスカッドで開幕4試合を乗り切ったモイーズのマネジメントは評価されるが、ジョンソンら前線の決定力不足が続けば上位進出の壁となりそうだ。
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