ラ・リーガ2026-27シーズン序盤、バレンシアが深刻な不振に陥っている。セビージャのラモン・サンチェス・ピスファン・スタジアムでおこなわれたアウェー戦で1-0の敗北を喫し、リーグ戦5試合を終えてわずか勝点1という惨憺たるスタートとなった。クラブを取り巻く内部的な問題と試合での低調なパフォーマンスが重なり、エドゥアルド・コルベラン監督の続投が問われる局面に差し掛かっている。
セビージャ vs バレンシア

TheSportsDB / Luis Antonio Valencia
見どころ:セビージャにとってはホームでの地位固めが問われ、バレンシアにとっては今季初勝利を狙う一戦だったが、結果は双方の明暗をくっきりと分けた。
得点シーン:ホアン・イグレシアスが81分にネットを揺らし、セビージャが1-0で逃げ切り。これが試合の決勝点となった。
試合の焦点:バレンシアは前半24分に守備の要セサール・タレガが負傷交代を余儀なくされ、チームバランスが大きく崩れた。ライアン・ノスケ・サトも後半62分に下がるなど、選手起用の面でも誤算が重なった。
セビージャは4-2-3-1を採用し、ユスフ・フォファナがチームトップの3シュートを記録。フォファナ自身は後半71分に退いたものの、前半から攻撃の起点として機能した。バレンシアは4-4-1-1で構え、ペペルが64本中53本のパスを正確につないでプレーメーカーとして奮闘したが、最後の局面での決定力を欠いた。GKのストーレ・ディミトリエフスキは4本のシュートを浴びながら3セーブを記録し、個人としては健闘したが、チームとして勝点を積み上げる力が不足していることが改めて露呈した。
試合はラモン・サンチェス・ピスファンに39,939人の観衆を集めて開催。セビージャは勝点10(3勝1分1敗)に伸ばし、バレンシアは5試合0勝1分4敗の勝点1のまま停滞している。(ESPN)
バレンシア・ファンとオーナー問題

TheSportsDB / Salva Sevilla
試合の低調なパフォーマンスだけでなく、クラブ内部の混乱も深刻だ。バレンシアのファンは今節に先立つ週、オーナーのピーター・リムに対して強い批判の声を上げており、一部の選手を「傭兵(mercenaries)」と呼んで非難した。ファンとオーナーの関係、チームへの信頼感は今季開幕前から既に損なわれており、連敗が続く状況でその溝はさらに深まっている。(ESPN)
また、バレンシアは移籍市場でも動きを見せており、BBCの報道によれば、リバプールのハービー・エリオットを今季残りのシーズンを対象にローンで迎える交渉に入っていた。エリオットは直近のプレミアリーグで出場機会に恵まれておらず、バレンシアは選手の給与の半分をリバプールに負担してもらう形での合意を模索していた。クラブが中盤の補強を急いでいた背景には、今節のような攻撃面での機能不全があったことは明らかだ。(BBC Sport)
戦術的考察
バレンシアが採用した4-4-1-1は、基本的に堅守を前提とし、少ないチャンスを生かすカウンター志向の布陣だ。しかしセビージャ戦では、タレガの早期離脱によって最終ラインの安定が崩れ、そのままセビージャのセットプレーやサイドアタックに押し込まれる展開が続いた。
特に問題なのは、ショットマップを見ると分かるように、バレンシアは試合を通じてほとんど有効なシュートを生み出せていない点だ。守備面での奮闘はディミトリエフスキ個人の努力によるところが大きく、チーム組織として守れているわけではない。またセビージャのルシアン・アグメが39本の正確なパスを供給し中盤を支配したのに対し、バレンシアのペペルの53本という高い数字は保持率の高さを示すものの、それが得点機会に結びついていないという深刻な”形なき支配”を象徴している。
コルベラン監督が今後取り組むべき課題は明確だ。まず前線での選手配置を見直し、ダビド・オトルビなどの前線の選手が孤立しないよう、中盤のサポートをより前がかりな形に組み替える必要がある。また守備的MFの選択も重要で、タレガのような主力が欠けた場合のリスク管理が甘いことも今節の敗因の一つだ。
数字で読む
| 項目 | セビージャ | バレンシア |
|—|—|—|
| 得点 | 1(イグレシアス 81’)| 0 |
| チームトップ総シュート数 | 3(フォファナ) | 1(オトルビ) |
| チームトップ正確パス数 | 39(アグメ) | 53(ペペル) |
| チームトップ守備関与数 | 10(サラス) | 14(ガヤ) |
| GKセーブ数 | 0(なし) | 3(ディミトリエフスキ) |
| 観客数 | 39,939人 | — |
| 今季勝点 | 10(3勝1分1敗) | 1(0勝1分4敗) |
バレンシアの「チームトップシュート数が1本」という数字はラ・リーガ基準で見ても著しく低く、チームとしての攻撃構築が完全に機能不全に陥っていることを示している。一方でセビージャは守備に特段の無駄を出さず、81分のセットプレーに近い形での1得点を守りきる安定感を見せた。勝点10は序盤戦としては上位圏に食い込む成績であり、両クラブの明暗が際立つ一戦だった。
編集部の見解
バレンシアの現状は、監督の戦術論以前にクラブ全体の構造的問題から来ていると断言できる。ピーター・リム体制下で財政難が続き、ファンとの信頼関係も崩壊しつつある中で、コルベラン監督ができることは限られている。しかしそれでも、5試合で1得点以下という攻撃の貧困は指揮官として容認できるレベルを超えている。タレガの負傷というアクシデントはあったにせよ、チームとして全体で1本しかシュートを打てない試合内容は戦術的な改善が届いていない証拠だ。
ハービー・エリオットのローン交渉が進んでいるとすれば、バレンシアが中盤に即戦力を求めていること自体は正しい方向性だ。しかし個人の補強だけで今の問題が解決するとは思えない。クラブがオーナーシップの問題を抱えたままでは、たとえ戦力が補強されても組織としての一体感は戻らない。コルベランは近いうちに結果を出さなければ、その椅子を失う可能性が高い。残り試合で連敗が続くようであれば、首脳陣は監督交代に踏み切らざるをえない局面に追い込まれるだろう。
今後の注目点
最大の注目点は次節以降のバレンシアが勝点を積み上げられるかどうかだ。今季5試合で0勝1分4敗という成績は、降格圏との距離がほぼなく、1試合でも連敗が続けば残留争いに本格的に巻き込まれる危険がある。コルベラン監督の続投がいつまで保証されるかも重要な焦点となる。
また、移籍窓が閉まった後の現有戦力でどう戦うかも問われる。ハービー・エリオットのローン交渉の行方がどうなったのか、中盤に新たな選手が加わることでチームの攻撃パターンが変化するかも見ものだ。ファンとオーナーの対立という構造問題がフィールド内の選手心理に影響していることも否定できず、次のホームゲームでのサポーターの反応がバレンシアという組織の一体感を測る重要なバロメーターとなる。セビージャは逆に今の好調を維持できるか、上位クラブとの対戦でどこまで勝点を積み重ねられるかに注目したい。
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