2026年5月22日に正式な永久監督就任が発表されたマイケル・キャリック体制のマンチェスター・ユナイテッドが、いよいよ2026-27シーズンに向けて動き出している。ルベン・アモリムの解任後、新指揮官のもとでクラブが何をどう変えようとしているのかが問われる開幕直前の今、プレシーズン5週間・6試合の総括と補強の評価を深掘りする。前シーズンの15位という屈辱的な結果からの巻き返しを期す今夏、プレシーズンで見えた光と影を徹底分析する。(BBC Sport)
プレシーズン総括:主要補強選手の評価
見どころ: 2勝2分2敗というプレシーズンの戦績は数字だけ見れば平均的だが、新加入選手の質と若手の台頭という点に大きな収穫があった。
負傷・離脱情報: メイソン・マウントが8月8日のパリ・サンジェルマン戦で足を負傷し、予防的措置として以降の試合に出場しなかった。ストライカーのベンヤミン・セスコと新GKのカール・ダーロウもプレシーズン全試合を通じて出場機会なし。
注目の選手: 全6試合にスタメン出場した3人——パトリック・ドルグ、アイデン・ヘブン、そして今夏チェルシーから£48mで加入したアンドレイ・サントス——の奮闘が際立った。
プレシーズンで最も存在感を示したのは、22歳の中盤の新戦力アンドレイ・サントスだ。ボールの循環、ポジショニングの規律、コミュニケーション能力の高さで周囲の評価を一変させた。もう一人の主要補強選手であるユーリ・ティーレマンスにも落ち着きがにじみ出ており、主将ブルーノ・フェルナンデスとの連携にも早くも相乗効果の兆しが見える。ウイングのブライアン・ムブエモはアフリカ・ネーションズカップ前半戦に見られた精力的なパフォーマンスを取り戻しており、コンディション面でも明るい材料だ。
ディフェンス面では、ヘブンが安定したプレーを見せ、レニ・ヨロも右サイドバックとして良い出来を披露した。ワールドカップから戻ったアマド・ディアロもフラッシュ的な輝きを放ち、19歳のアカデミー出身のシェア・レイシーは慎重に起用されつつも大きな期待を集めている。(BBC Sport)
残る課題:スカッドの整理と補強の空白
プレシーズンを通じて浮き彫りになった問題も少なくない。マウントが最初の3試合で最も安定したパフォーマンスを見せていただけに、その後の不在は戦術上の痛手だ。マウントの代役として起用されたトビー・コリアーは一定の穴を埋めたものの、クラブ内では彼の将来はユナイテッド以外にあるとみており、移籍への関心も高いとされている。
フルバックのハリー・アマスはルーク・ショーのバックアップとして帯同したが、こちらもローン移籍が有力視されており、永久移籍よりも期限付き放出が現実的と関係者は見ている。スカッド内に余剰人員が残っている現状では、移籍ウィンドウ終了までの放出作業が急務だ。(BBC Sport)
戦術的考察
キャリックが新体制で採用しようとしているサッカーの核心は、「ボール保持と中盤の安定」にある。アンドレイ・サントスとユーリ・ティーレマンスの組み合わせは、前政権のアモリム時代に欠けていた「受けて捌く」能力を中盤に持ち込む。サントスは狭いスペースでのボール循環とポジショニング規律が高く評価されており、ブルーノ・フェルナンデスが高い位置を取るためのスペースを作り出す役割を担える。ティーレマンスはフェルナンデスとのリンクアップで「8番+10番」の関係性を構築し、前線への縦パスを加速させる役割が期待される。
守備面ではヘブンとヨロのコンビが注目だ。ヨロが右サイドバックとして機能しうることは、チームに配置の柔軟性をもたらす。ただし、ルーク・ショーの左サイドバックのバックアップが手薄であることは明白な弱点であり、ここをどう解消するかがシーズン序盤の安定度を大きく左右する。「左サイドバック補強が最大の未解決課題」という評価が各メディアから聞こえてくるのも必然だ。前線ではセスコとダーロウがプレシーズン未出場という事実が一抹の不安を残しており、開幕当初のコンディション管理に細心の注意が求められる。
数字で読む
プレシーズン6試合の内訳は2勝2分2敗。この数字自体よりも重要なのは、全試合に先発した選手が3名いた点だ。パトリック・ドルグ、アイデン・ヘブン、アンドレイ・サントスの3名は体力・フィット感の両面でキャリックの信頼を最も獲得した存在といえる。
主要補強のアンドレイ・サントスの移籍金は£48m(チェルシーから)。22歳の中盤選手にとってこの投資は決して小さくないが、プレシーズンのパフォーマンスを見る限りキャリックが期待する中盤の刷新に応えられる素地がある。もう一人の主要補強ティーレマンスは経験豊富な即戦力として加入しており、サントスとの年齢差もある意味で中盤の構成に深みをもたらす。
前シーズンはリーグ戦34試合でわずか10勝にとどまり、順位は15位(クラブにとって1973-74年の降格シーズン以来最低の成績)。この数字からの回復が、キャリック体制の評価軸になることは間違いない。(BBC Sport)
編集部の見解
キャリック体制への移行はユナイテッドにとって「実験」ではなく「必要な刷新」だ。アモリム政権下での迷走——34試合10勝、リーグ15位という数字が示すように——はもはや「再建期の混乱」では説明がつかない水準にまで落ち込んでいた。キャリックが見せているのは、外圧に動じない冷静さと、選手を正確に評価して起用する目だ。メディアの挑発的な質問に対して表情一つ変えず対応できる人間力は、混乱した更衣室を安定させるうえで現時点では最も必要とされる資質だろう。
ただし、希望と懸念は同時に存在する。アンドレイ・サントスとティーレマンスの補強は方向性として正しい。しかし、左サイドバック問題が未解決のまま開幕を迎えることは明らかな構造的欠陥だ。ショーが主軸を担えるとしても、その背後に信頼できるバックアップがいない状況はリスクが高い。余剰人員の整理も急いで断行すべきだ。移籍ウィンドウが閉まる前にコリアーとアマスのような「将来が他クラブにある選手」をスパッと放出し、その資金を左サイドバック獲得に充てなければ、開幕スタートダッシュに陰が差す可能性は高い。
今後の注目点
最初の試金石は開幕から間もない試合日程だ。前シーズンのアモリム体制でも証明された通り、ユナイテッドは「特定の相手に同じ過ちを繰り返す」パターンが続いていた。キャリックがそのジンクスを打ち破れるかどうかを測る最初の指標は、ホームでのブライトン戦と、ノッティンガム・フォレストおよびトッテナムへのアウェー戦だ。過去2シーズンでいずれも敗れているこれらの対戦相手に対して勝点を積み上げられるか否かで、体制が本当に変わったかどうかが判明する。
また、移籍ウィンドウの残期間(8月末まで)に左サイドバック補強が実現するかどうかも重大なポイントだ。セスコとダーロウのコンディションが開幕時にどの水準にあるかも要注目。そしてメイソン・マウントの足の回復具合が、開幕スタメンの顔ぶれを大きく左右する。キャリック体制の真の評価は最初の6試合が終わった時点で出るはずだ。
情報源
- Signings impress but squad issues remain – learnings from Man Utd’s summer – BBC Sport
- Manchester United: What Michael Carrick has changed since Ruben Amorim’s sacking ahead of AC Milan friendly – Sky Sports
- Manchester United’s pre-season analysed: Joshua Zirkzee resurgent and Marcus Rashford reunited – but they still need a left-back – Sky Sports
