今夏のプレミアリーグ移籍市場で最も注目を集めたウエストハムの若きミッドフィールダー、マテウス・フェルナンデスがトッテナムへの移籍を決断した。当初はマンチェスター・ユナイテッドへの加入が有力視されていたが、最終的にスパーズが競争を制した。フェルナンデス自身が移籍を選んだ経緯を語ったことで、その内幕が明らかになった。マイケル・キャリック率いるユナイテッドにとっては痛恨の補強失敗であり、クラブの現状と将来像が問われる場面でもある。
マテウス・フェルナンデスのトッテナム移籍とその決断

Bryan Berlin / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)
移籍の概要: ウエストハムからトッテナムへ、移籍金約8500万ポンドで完全移籍が成立した。この金額は今夏の移籍市場における4番目に高額な取引とされている。
フェルナンデスがトッテナムを選んだ理由として、まず挙げられるのはロベルト・デ・ゼルビ監督との深い信頼関係だ。フェルナンデスはThe Athleticのインタビューで「ビッグクラブでプレーし、試合に勝ち、プレミアリーグのタイトルを争いたいという気持ちがあった」と語り、さらに「デ・ゼルビ監督が私と家族に話しかけてくれた方法がとても重要だった。毎日電話をかけてきてくれた」と明かした。
とりわけ印象的なのは、フェルナンデスの両親への配慮だ。「父も母も英語がそれほど得意ではない。だからこそ、感覚的なつながりが重要だった。監督は私を気にかけてくれると言ってくれたし、イングランドでの第二の父になると言ってくれた。彼のもとで働けることがとても嬉しい」と、監督との人間的な絆が決め手になったことを強調した。
さらに第3の要因として、元スポルティング・リスボンのチームメイトであるペドロ・ポロの存在がある。フェルナンデスは「ある日彼から電話がきた——寝ていたから出なかったが——ポルトガル語で『マテウス、絶対に俺たちと来い。監督に君を連れてくるよう言ったのは俺だ』と言っていた」と振り返った。ポロについては「世界最高クラスの右サイドバックの一人。最高の男だ」と絶賛している。(Football365)
マンチェスター・ユナイテッドの中盤補強計画
フェルナンデス獲得を逃したユナイテッドは、すでに次の動きを始めている。マイケル・キャリック監督体制のもと、アタランタのエデルソン・シルバを約3800万ポンドで獲得することで合意に達した。また、アンドレイ・サントスとユーリ・ティーレマンスもすでに加入しているが、夏の窓閉幕前にもう1人の中盤補強を目指している。(Football365)
ポール・スコールズはサントスの獲得(チェルシーから約5000万ポンド)に懸念を示しているとも伝えられている。ユナイテッドはフェルナンデスの離脱に加え、マヌエル・ウガルテが深刻な膝の負傷を抱えるというダブルパンチを受けており、中盤の再構築は急務となっている。
戦術的考察
デ・ゼルビのトッテナムにとって、フェルナンデスの加入は戦術的に非常に理にかなっている。デ・ゼルビが好む高強度のポゼッションサッカーは、インテンシティが高く技術的に優れた中盤選手を必要とする。フェルナンデスはウエストハムの降格シーズンにおいてもクオリティを維持し続けたことで、その個人能力の高さを証明した。
右サイドバックのポロとの連携もポイントだ。ポロが高い位置を取る際にフェルナンデスがスペースをカバーする構造は、デ・ゼルビの4-2-3-1または3-4-2-1のいずれのシステムでも機能しうる。とりわけ中盤のプレスラインを高く設定するデ・ゼルビのスタイルでは、フィジカルと技術を兼ね備えたフェルナンデスの特性はその要求にマッチしている。
一方のユナイテッドが仮にフェルナンデスを獲得していた場合、キャリック監督がどう使うか、システムとの整合性は不明確なままだった。デ・ゼルビのような明確なビジョンと個人へのアプローチが示せなかった点が、最終的に選手の心を動かせなかった根本原因と見るべきだ。
数字で読む
フェルナンデスの移籍金約8500万ポンドは、今夏の移籍市場全体で4番目に高額な数字だ。ウエストハムが降格したシーズンにもかかわらず、この評価額が維持されたことはフェルナンデスのマーケットバリューの高さを示している。
対照的にユナイテッドがフェルナンデスの代替として獲得するエデルソン・シルバは約3800万ポンドと、半分以下の金額だ。また、すでに加入済みのサントスが約5000万ポンドとされており、ユナイテッドはフェルナンデス1人分の金額を複数選手で補おうとしている構図となっている。トッテナムが「相場を超えた金額」を支払ってでも獲得に動いたことが、最終的に競合を制した要因の一つでもある。
編集部の見解
今回のフェルナンデスの移籍決断は、現在のマンチェスター・ユナイテッドが抱える本質的な問題を露わにした。金銭的な問題ではない。移籍市場でトッテナムはユナイテッドより高い金額を提示したとはいえ、フェルナンデスが強調したのは「感覚」「つながり」「監督との信頼」だった。デ・ゼルビが毎日電話をかけ、家族への配慮まで示したというエピソードは、単なる口説き文句ではなく、そのクラブが持つ明確な「プロジェクト感」の表れだ。
ユナイテッドはかつて、その名声だけで最高の選手を引き寄せられるクラブだった。しかし今や若い才能は「このクラブで何を成し遂げられるか」を問うようになっている。キャリック監督がどのようなビジョンを提示できるか——それが今後の補強活動の成否を分ける最大の鍵だ。フェルナンデスを逃した事実を単なる「敗戦」で終わらせず、クラブの方向性を再定義するきっかけにしなければならない。
今後の注目点
まず注目すべきは、トッテナムにおけるフェルナンデスのスタメン定着だ。デビュー戦でゴールを決めたとも報じられており、即戦力としての期待値は高い。デ・ゼルビのシステムにどのように組み込まれるか、特にポロとの右サイドの連携に注目したい。
ユナイテッドについては、夏の窓閉幕までにもう1人の中盤補強を目指しているとされており、誰をターゲットにするかが焦点となる。ウガルテの負傷離脱という緊急事態も抱えており、キャリック体制にとって最初の大きな試練となりそうだ。
また、トッテナムがフェルナンデスに加えてヴィクター・オシメンの獲得も視野に入れているとも報じられており、今夏のスパーズの補強がどこまで拡大するのかも引き続き注目だ。プレミアリーグのタイトル争いに本格的に加わるという目標を掲げるトッテナムが、シーズン開幕時点でどのような陣容を整えるかに目を離せない。
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