マンチェスター・ユナイテッドの中盤再建が、いよいよ待ったなしの局面を迎えている。カゼミーロの退団、マヌエル・ウガルテの深刻な膝靭帯損傷という二重苦に加え、第一・第二のターゲットだったエリオット・アンダーソンとマテウス・フェルナンデスをいずれも逃した今、マイケル・キャリック監督率いるユナイテッドはチェルシーのアンドレイ・サントス(22)という新たな選択肢に白羽の矢を立てた。チャンピオンズリーグ復帰を控える今夏、中盤の充実は最優先課題だ。
アンドレイ・サントス獲得交渉の現状

TheSportsDB / Aderlan Santos
見どころ: チェルシーが£5000万の評価を付ける22歳ブラジル人ミッドフィルダーを、ユナイテッドが本格的に動き始めた。
交渉の進捗: 現時点でユナイテッドはサントス本人サイドへのアプローチを行い、初期の個人面での話し合いは進んでいるものの、正式な入札はまだ行われていない。クラブ間の具体的な交渉もこれからという段階だ。
チェルシーのスタンス: チェルシーは新監督シャビ・アロンソ体制のもとで資金調達の必要性があり、サントスを「絶対に手放せない選手」とは見ていない。ただし、できれば引き留めたいという本音もある。一方でサントスはモイセス・カイセドに序列で後塵を拝しており、カイセドが最近新たな契約延長にサインしたことで、より多くの出場機会を求めて移籍に前向きな姿勢を見せている。(The Guardian)
競合クラブの存在: ユナイテッドだけでなく、サンドロ・トナーリの後釜を探すニューカッスルもサントスの動向を注視している。複数クラブがエージェントに打診しているとも報じられており、交渉が長期化すれば価格高騰のリスクもある。(Football365)
中盤再建の全体像:エデルソンとその先
ユナイテッドはすでにアタランタとエデルソンの£3500万での契約を合意済みだ。ただし、エデルソンはブラジル代表としてワールドカップに参戦中であり、大会終了後に移籍の手続きが進む予定。さらにワールドカップ参加者には最低3週間の休暇が付与されるため、実際にチームに合流するのはかなり後になる見通しだ。(BBC Sport)
第一候補だったアンダーソンは6月25日にマンチェスター・シティがノッティンガム・フォレストとクラブ記録となる£1億1600万での移籍を合意。続くマテウス・フェルナンデスもトッテナムがクラブ記録の£8500万でウェストハムから獲得したことで、ユナイテッドの手が届かない存在となった。ウガルテについては、重傷による売却断念を余儀なくされている。(Football365)
この状況でキャリック監督が7月9日のプリシーズン始動時にシニアの中盤選手として手元に残るのは、どちらかといえば攻撃的な役割を担うメイソン・マウントのみという現実がある。
サントスと並行して、レアル・マドリードのオーレリアン・チュアメニやボーンマスのアレックス・スコットも候補として浮上している。ただしチュアメニはマドリードが手放す意向を見せておらず、スコットはボーンマスが新契約提示で引き留めを図り、さらに約€7000万の高額評価を設定している。(Football365)
戦術的考察
マイケル・キャリック監督が直面している課題は、単なるレギュラー候補の不在にとどまらない。カゼミーロが担っていた「守備的アンカー」の役割が完全に空白となっているのが最大の問題だ。コビー・メイヌーはプレミアリーグ屈指の若手ミッドフィルダーだが、彼だけで中盤を支えることはチャンピオンズリーグの連戦を見据えると明らかに無理がある。
アンドレイ・サントスは中央のセントラルミッドフィルダーとして機能する選手だ。チェルシーではカイセドとエンツォ・フェルナンデスのシャドーとして主にカップ戦に登用されてきた経緯から、セカンドオプションとしての役割はこなせることが証明されている。しかし、ユナイテッドが求めているのはメイヌーと中盤を組める戦術的なパートナーである。攻守のバランスを保ちながら試合をコントロールできる選手かどうかという観点では、昨季のプレミアリーグでのスタッツ(27試合1得点)だけで判断することは難しい。
エデルソンとサントスが揃えば、中盤の構成として「エデルソン(プレスの起点・ダイナモ型)+メイヌー(運搬・テクニック)+サントス(バランス)」という3センターを組む選択肢が生まれる。ただしサントスがチェルシーでこなしていた役割は本来のレギュラーとは言えず、ユナイテッドで主力としてフル稼働できるかは未知数だ。
数字で読む
サントスの関連する数字を整理しよう。
- チェルシーの要求額: £5000万(約€6000万)
- サントスの現在の市場価値(Transfermarkt): €4000万
- ユナイテッドが期待する合意額: チェルシーは£5000万を基準とするが、上乗せ交渉の余地あり
- チェルシーでの通算成績(全大会): 47試合3得点5アシスト
- 昨季プレミアリーグ出場数: 27試合1得点
- リーグ戦フル出場(90分)回数: わずか4回
この「27試合・フル出場4回」という数字がサントスの現チェルシーでの立ち位置を端的に示している。主力ではなく、あくまでローテーション要員だ。参考として、今夏ユナイテッドが逃したアンダーソンは£1億1600万、マテウス・フェルナンデスは£8500万と、中盤プレーヤーの市場価格は急騰している。サントスの£5000万という値付けは、それらと比べれば「手頃」に見えるが、実際の貢献度と出場時間を踏まえると決して安価な買い物ではない。
ボーンマスのアレックス・スコットが約€7000万、サントスが£5000万と、いずれにせよユナイテッドは中盤1人に多額の投資を求められている状況だ。(Transfermarkt)
編集部の見解
ユナイテッドのサントス獲得は「妥協の産物」と正直に認識すべきだ。アンダーソン、マテウス・フェルナンデスと立て続けに逃した後に浮上した選択肢であり、純粋な補強優先順位から選ばれた名前ではない。チェルシーでのフル出場わずか4回という事実は、サントスがまだプレミアリーグのハイレベルな試合で毎週スタメンを張り続けた経験に乏しいことを意味する。
それでも、だからこそ動くべき理由がある。チャンピオンズリーグを戦うためにはエデルソン1人の補強では絶対に足りない。メイヌーに過度な負荷をかけ続ければ怪我のリスクも高まる。サントスはチェルシーでのローテーション経験、そしてストラスブールへのローン中に示した高いパフォーマンスの実績を持つ。粗削りさを残しつつも、マイケル・キャリックの指導のもとで開花する素地は十分にある。
問題は£5000万という価格だ。チェルシーはアンダーソン(£1億1600万)とマテウス・フェルナンデス(£8500万)の移籍で設定された相場を根拠に強気の交渉に出るだろう。ユナイテッドはそこで感情的な入札合戦に巻き込まれてはいけない。ニューカッスルの動向を利用しながら、£4500万前後での決着を目指した冷静な交渉こそが求められる。£5000万超えを払うなら、アレックス・スコット獲得との比較検討に立ち返るべきだ。
今後の注目点
最も重要な時間軸は「7月9日のプリシーズン始動」だ。この時点でキャリック監督の手元にいるシニアの中盤はメイソン・マウントのみ。7月18日のレンハムとのフレンドリーマッチまでに実質的な戦力が整わない可能性が高い。
サントスとエデルソンはいずれもワールドカップ関連で合流が遅れることが見込まれる。エデルソンはブラジルが大会を勝ち進むほど遅くなり、サントスはワールドカップのスコッドには入っていないため、夏の交渉は早期決着が可能だ。ユナイテッドが「正式入札」に動くタイミングが今後数日以内になるか否かが最初の焦点となる。
また、チュアメニとアレックス・スコットへのアプローチも並行して続くだろう。スコットについては、アーセナルも高い関心を示しており、同じプレミアリーグ内でのクラブ間競争が激化すれば価格は上昇する。ユナイテッドとしては早めに意思決定を行い、複数案件を同時進行させることが肝心だ。ワールドカップ決勝は7月19日であり、そこから逆算した中盤補強の完結ラインは8月中旬以降になる見通し。プレミアリーグ開幕前に陣容を整えられるかが、キャリック体制の最初の試金石となる。
情報源
- Santos latest midfielder considered by Man Utd – BBC Sport
- Man Utd set sights on £50m Chelsea midfielder as top sources confirm interest – Football365
- Manchester United target Andrey Santos but Chelsea value midfielder at £50m – The Guardian
- Romano names two midfielders Man Utd now planning to sign – Football365
- Man Utd launch Andrey Santos move with ‘approach’ for Chelsea star – Transfermarkt