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マンチェスターダービーVARハーランドゴール問題、審判責任者ウェッブが公開説明へ

2026.09.16

マンチェスター・シティがマンチェスター・ユナイテッドを1-0で下したマンチェスターダービーで、エルリング・ハーランドの決勝ゴールをめぐるVAR判定が重大なミスだったと認定された。審判組織Pro Refは「判断の誤り」を公式に認め、マンチェスター・ユナイテッドに謝罪。さらに審判責任者のハワード・ウェッブが今季最初の「マッチ・オフィシャルズ・マイクド・アップ」に出演し、事の経緯を詳細に説明することが明らかになった。試合会場で74,161人のサポーターがこの判定の真相を知ることができなかったという事実は、VAR音声の公開をめぐる議論にも再び火をつけている。

ハーランドゴールのVARミス——何が起きたのか

Michael Oliver
Michael Oliver
Ardfern / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

試合の経緯: マンチェスター・シティが10人(フィル・フォーデンが前半23分に退場)でオールド・トラッフォードに乗り込みながら、後半にエルリング・ハーランドが後方から入ったジョスコ・グヴァルジオルのクロスをバックポストで押し込み、決勝点を奪った。

判定の経緯: 副審は当初、オフサイドと判断してフラッグを掲げた。しかしVARが介入し、ハーランド自身はオンサイドであり、オフサイドポジションにいたエンツォ・フェルナンデスについてはボールに触れておらず、また最も近くにいたユナイテッドのディフェンダー、リサンドロ・マルティネスのプレーに干渉していないと判断。審判マイケル・オリバーはVARの決定に従い、ゴールを認めた(BBC Sport)。

Pro Refの謝罪: 試合後、Pro Refはマンチェスター・ユナイテッドに対して「判断の誤りがあった」と認め、公式声明を発表した。オンフィールドのオフサイド判定を覆すべきではなく、フェルナンデスはマルティネスのプレーに干渉していたとされる。VAR担当のマット・ドノヒューとブレイク・アントロバスの2名は、その後の審判アサインから外されている(Manchester Evening News)。

ウェッブの公開説明: Pro Refの最高審判責任者であるハワード・ウェッブは、今季最初の「マッチ・オフィシャルズ・マイクド・アップ」に出演し、スタジアム映像のVAR音声を含めて経緯を公開する予定だ。この番組でウェッブはドノヒューとアントロバスのストックリー・パークでのコミュニケーションを再現して見せることになる(Manchester Evening News)。

試合そのものの振り返り——シティの「意地」

Erling Haaland
Erling Haaland
Egghead06 / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

フォーデンの退場という最悪の展開をものともせず、シティは組織的な守備でユナイテッドの攻撃を封じた。ダニー・マーフィーはBBC Sportのコラムで「11対11だったときはユナイテッドの方がよかった。マーカス・ラッシュフォードは特に積極的で、マイケル・キャリック率いるユナイテッドが優勢に見えた」と述べつつも、退場後のシティの対応力を高く評価した(BBC Sport)。

ユナイテッドはラッシュフォードのフリーキックがポストに当たり、コビー・メイヌーの長距離シュートも枠をとらえた。しかし最後の局面での決定力を欠き、終盤にはシティのGKジャンルイジ・ドンナルンマにブライアン・ムベウモのシュートを止められるにとどまった。

VAR音声の公開問題——ファンは「二級市民」か

今回のダービーで特に問題視されているのは、スタジアムにいた74,161人のサポーターがVAR判定の内容をリアルタイムで知ることができなかった点だ。テレビ中継のコメンタリー陣はVARの音声を聞くことができるが、スタジアムの観客には一切知らされない仕組みになっている(BBC Sport)。

ウェッブはVARの生音声をスタジアムや視聴者に届けるためのロビー活動を行ってきたが、サッカーの規則制定機関であるIFABやFIFAは消極的だ。コミュニケーションの質の問題、審判へのプレッシャーの増加、審判の信頼性への悪影響などが懸念として挙げられている。IFABのルカス・ブルッド事務局長兼CEOは以前のインタビューで、VAR音声のライブ放送は「混乱を招く」と述べている(BBC Sport)。

同じ週末、クリスタル・パレスのイプスウィッチ・タウン戦(3-2敗戦)でもアクセル・ディサシのレッドカード判定にVARが1分以上かけて確認を行ったが、セルハースト・パークの観客にはやはり何の説明も与えられなかった。

戦術的考察

今回のダービーが示したのは、「人数的不利」という戦術的制約に対するシティの成熟度だ。フォーデンが23分に退場した後、エンツォ・マレスカ監督は前半に1度の交代のみ(レルキをンジャイに替えたのみ)で乗り切った。10人になったチームがどう振る舞うかは、指揮官の戦術眼よりも選手個々の経験値に依存する部分が大きい。「今季ここまでシティを疑っている人は、あの試合を見ればいい」というマーフィーの言葉は的を射ている。

一方、ユナイテッド側から見ると、11対11の時間帯に主導権を握りながらも数的優位を活かしきれなかったことは、マイケル・キャリック体制が抱える課題の一端を浮き彫りにした。幅を使った攻撃でラッシュフォードや右サイドは機能していたが、最終局面で決め切る迫力が足りなかった。オフサイド問題に関して言えば、VARがエンツォ・フェルナンデスをオンフィールドで確認しながらも「不干渉」と判断した点は、オフサイドの”干渉”概念の解釈がいかに審判の主観に依存しているかを示している。このあいまいさこそが、VAR改革論議の核心にある。

数字で読む

  • 試合スコア: マンチェスター・シティ 1-0 マンチェスター・ユナイテッド
  • ハーランドのゴール: 後半、グヴァルジオルのクロスから
  • フォーデン退場: 試合開始わずか23分
  • スタジアム観客数: 74,161人(VAR音声を聞けなかった人数)
  • VAR担当の処遇: ドノヒューとアントロバスの2名がアサインから外される
  • Pro Refの運用経緯: MLS(アメリカ)が2019年にVAR音声の試合後公開を世界で初めて実施。プレミアリーグは「マッチ・オフィシャルズ・マイクド・アップ」でそれを踏襲
  • VAR導入からおよそ10年が経過した現在も、ライブ音声公開を実現したリーグは確認できない

編集部の見解

Pro Refが「判断の誤り」を認めてユナイテッドに謝罪した事実は重い。しかし謝罪がゴールを取り消すわけではなく、ユナイテッドの勝ち点1は戻ってこない。これはVARの根本的な問題だ。誤審の被害を受けたチームへの「救済措置」が存在しない以上、透明性の向上だけでは不十分である。

ウェッブがマッチ・オフィシャルズ・マイクド・アップで経緯を公開することは、プレミアリーグの透明性戦略として評価できる。しかし問題の本質はライブ放送ではなく、スタジアムの観客がリアルタイムで情報を得られない点にある。テレビ視聴者とスタジアム観客の間に存在する情報格差は、観戦体験の公平性を根本から損なっている。IFABとFIFAが「混乱を招く」という理由でライブ音声の解禁を拒み続けることは、もはや時代遅れの姿勢だと断言する。ラグビーや野球など他のスポーツが実現していることが、なぜサッカーでできないのか。信頼回復の近道は、観客を「信頼できる大人」として扱うことだ。

また今回、VAR担当2名が即座に職務を外されたことは責任の所在を明確にする意味で適切な対応だ。しかしシステムの欠陥——特に”干渉”概念の解釈幅の広さ——に対処しない限り、同様の問題は繰り返される。個人の処分で終わらせてはならない。

今後の注目点

最も直近の注目点は、ハワード・ウェッブが出演する今季最初の「マッチ・オフィシャルズ・マイクド・アップ」の内容だ。ウェッブがVARの音声をどこまで公開し、どのような説明を行うかがカギとなる。もし音声の公開によってVAR担当が「干渉なし」と判断した根拠が明確になれば、今後の審判教育や判定基準の見直しにつながる可能性がある。

また、IFABとFIFAが今季以降にVAR音声のライブ放送解禁に向けた議論を前進させるかどうかも注視したい。ウェッブが参加する作業部会がどこまで圧力をかけられるかが問われる局面だ。

プレミアリーグのテーブル争いという観点では、シティがこの勝利でどのような順位に立つか、またユナイテッドがこの誤審ショックをどう乗り越えて次節以降の試合に臨むかが引き続き焦点となる。マイケル・キャリックが率いるユナイテッドにとって、今季の課題——数的優位の活かし方、フィニッシュ精度——に向き合う時間は待ってくれない。


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編集長 · 戦術担当