マンチェスター・ユナイテッドの中盤再建は今夏最大のテーマだ。マイケル・キャリック監督体制のもと、すでにユーリ・ティーレマンス(£35m)とアンドレイ・サントス(約£50m)の2名を獲得済みだが、膝の負傷で離脱中のマヌエル・ウガルテと契約満了で退団したカゼミーロの穴を埋める3枚目の確保が急務となっている。そんな中、プレシーズンでの活躍が外部移籍の必要性そのものを問い直す存在として浮上しているのが、27歳のメイソン・マウントだ。
メイソン・マウント、プレシーズンで「内部解決」の可能性を示す

Werner100359 / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)
注目ポイント: ヘルシンキでのレクサム戦、そしてBBC Sportが同行取材したトロンハイムでのローゼンボルグ戦(5-0勝利)という2試合で、マウントは中盤センターとして際立ったパフォーマンスを見せた。
現状の文脈: マウントは2023年にチェルシーから£55mで加入後、最初の2シーズンを怪我との戦いに費やしたが、昨シーズンは安定したパフォーマンスを取り戻した。ユナイテッド在籍72試合で7ゴールというキャリア数字が示すように、インパクトには波があったが、今夏は別人のような輝きを放っている。
マウント本人はサントスとのコンビネーションについて、「アンドレは少しディフェンシブなので、自分がより前に出られる。守備面でも、2人とも積極的にボールを奪いに行く姿勢は同じ」と語っている (BBC Sport)。
ローゼンボルグ戦ではキャプテンマークを巻く場面もあり、ベテランとしてのリーダーシップも発揮。若手選手たちへのサポートも積極的に行うなど、チーム内での求心力も増している。
3枚目の中盤候補——外部市場の最新状況
主な候補: アレックス・スコット(ボーンマス)、マヌ・コネ(ローマ)、エドゥアルド・カマヴィンガおよびオーレリアン・チュアメニ(共にレアル・マドリー)
最新の動き: Football365の報道(7月29日付)によれば、ユナイテッドは予算管理を優先しながら3枚目の候補を2名に絞り込みつつある。チュアメニについてはレアル・マドリーが放出に応じる意向を示しているとされるが、想定される移籍金と給与水準はユナイテッドの財政方針と相容れない可能性が高い (Football365)。
スコット問題の複雑化: アレックス・スコットに関しては、チェルシーがすでに約£64mの入札を行い、続いて約£70mの2度目のオファーを準備しているとの情報もある。ボーンマスはスコットをクラブに引き留めたい姿勢だが、スコット本人はユナイテッド、チェルシー、アーセナルを含む複数クラブへの移籍に「オープン」だと報じられている。リバプール監督アンドニ・イラオラもスコットを高く評価しており、争奪戦は更に激化する可能性がある (Football365)。
一方でマヌ・コネはユナイテッドが「検討中」の段階。ブライトンのカルロス・バレバやボタフォゴのダニーロはユナイテッド側から交渉を主導しているのではなく、オファーを受けた形に近いとファブリツィオ・ロマーノも指摘している。
戦術的考察
メイソン・マウントが今プレシーズンで見せているポジションは、アタッキングミッドフィールダーではなくセンターミッドフィールダーだ。この配置は一見すると驚きだが、実はキャリック監督が志向するシステムとの相性が非常に良い。
サントスがディープライイング・ミッドフィールダー(いわゆる「8番」の役割より低め)として最終ラインからボールを受け、パスコースを開いてゲームを組み立てる。そこにマウントが前方のスペースに動き出す「インナーミッドフィールダー」として機能する構造は、現代的な2センターの形として機能しやすい。
マウントの強みはまさにここにある。狭いスペースでのコントロール技術、的確な前向きドリブル、そして何より「守備をサボらない」姿勢——本人も「タックルが怖くない」と語る通り、プレスへの参加やインターセプトの積極性はトップレベルのセンターとして求められる要素を備えている。
ただし課題もある。マウントは36試合のイングランド代表歴を持ちながら、ここ4年間は代表から遠ざかっており、コンスタントなシーズンを通じた耐久性に疑問符がつく。また、サントスとの2枚中盤では守備の強度不足を突かれた場合のリスクも残る。3枚目の外部補強が実現すれば、マウントをこのポジションで起用しながら必要に応じてより上のポジションでも使える柔軟性が生まれる。逆に3枚目獲得が不発に終わった場合、マウントが中盤の「詰め将棋」の中心ピースとなる可能性が高い。
数字で読む
- ユナイテッドの中盤投資額(今夏): ティーレマンス£35m+サントス約£50m=約£85m。ここにさらに大型補強を加えれば、中盤だけで£1億以上の夏となる
- マウントのユナイテッド通算記録: 72試合出場・7ゴール。率で見れば決して高くないが、負傷離脱による機会損失を差し引けば昨シーズンの安定性は評価に値する
- マウントの加入費用: £55m(2023年)。この投資を活かすためにも、今夏の「再覚醒」を活用しない手はない
- スコット争奪の相場: チェルシーの2度目入札予定額が約£70m。これはユナイテッドが今夏掲げる「予算管理」の方針と相反するレベルであることは間違いない
- アタランタ・エデルソン問題: 当初優先ターゲットだったエデルソン(アタランタ)はメディカルチェックの問題で破談。このつまずきがその後の迷走の遠因となっている
編集部の見解
マウントをセンターミッドフィールダーとして起用する構想は、今夏ユナイテッドが直面している最もインテリジェントな「課題解決策」だ。外部補強に数千万ポンドを追加投入するよりも、すでにクラブにいる選手を適切なポジションで使いこなす方が、キャリック監督の構想には合致している。
アレックス・スコット問題の本質は、ユナイテッドにとって「スコットが欲しいか」ではなく「スコットに払える額が足りるか」だ。チェルシーが£70mで動こうとしている以上、ユナイテッドが財政規律を守ろうとすれば必然的に後退を余儀なくされる。その観点から言えば、マウントの「内部昇格」はコスト0で即戦力を確保する最善の選択肢だ。
ただし、これはあくまでプレシーズン2試合の印象論だという点は忘れてはならない。ローゼンボルグ相手に輝いた選手がプレミアリーグ開幕後もそのパフォーマンスを維持できるかは、別問題だ。キャリック監督がマウントを中盤の軸として本当に信頼するなら、移籍市場での3枚目探しはスコールズやキャリックが現役時代に見せたような「中盤の知性」を持つ選手——つまり攻守を繋ぐリンクマン——に絞るべきだ。チュアメニのような高コストな選択肢に無理に手を出し、財政的な余裕を失うことは避けるべきである。
今後の注目点
まず直近の焦点は、プレシーズン残り試合でのマウントとサントスの連携継続だ。2試合では「雰囲気」しか分からない。プレミアリーグ開幕まで残り1ヶ月を切る中で、より強度の高い相手に対してもこのコンビが機能するか、試金石となる試合が続く。
移籍市場に関しては、アレックス・スコット争奪戦の行方が8月内に決着する見通し。チェルシーの2度目入札が拒否された場合、ユナイテッドに再浮上の機会が生まれるが、ボーンマスの姿勢から考えると£70m超の支出なしに獲得するのは現実的ではない。その場合はマヌ・コネかバレバに軸を移す展開が予想される。
また、負傷中のマヌエル・ウガルテの復帰時期も重要な変数だ。ウガルテが早期復帰を果たした場合、3枚目補強の緊急性が下がり、マウントをより攻撃的な役割で使う選択肢が広がる。ウガルテ不在が長引くほど、センターとしてのマウント起用は継続されるだろう。プレミアリーグ開幕時のスタメン配置が、夏の補強方針の「答え合わせ」となる。
情報源
- Could Mount be final piece in Man Utd midfield jigsaw? – BBC Sport
- Manchester United’s midfield rebuild: Who is the perfect fit for third signing after Andrey Santos and Youri Tielemans? – Sky Sports
- Man Utd narrow third midfielder signing search down to two preferred options – Football365
- Potential third Man Utd midfield signing now ‘open’ to joining after new Chelsea bid is revealed – Football365
- Is Mason Mount what Man United, Amorim have been missing? – ESPN
- Mason Mount: Can Manchester United’s pre-season revelation be a big part of Michael Carrick’s midfield overhaul? – Sky Sports
