アーセナル、リバプールなど欧州の強豪が夏の移籍市場で積極的に動く中、セリエAでも大きな動きが完結した。ASローマを契約満了で退団したトルコ代表右サイドバック、ゼキ・チェリクが2026年7月16日付でユベントスに正式加入した。移籍金ゼロというビッグクラブにとっては理想的な条件での獲得であり、ローマとの交渉決裂の経緯も含めて注目を集めている。
ゼキ・チェリク ユベントス移籍の全経緯

Moisio / Wikimedia Commons (Public domain)
移籍の概要: 移籍金ゼロ(フリートランスファー)、ユベントス加入日:2026年7月16日、契約期間:2029年6月30日まで(3年契約)
チェリクのローマとの契約は2026年夏に満了を迎えており、今冬の段階からその去就が注目されていた。イタリア紙『ラ・スタンパ』の報道によれば、ローマはチェリクに対して年俸約200万ユーロ+ボーナスの更新オファーを提示していたが、好調なパフォーマンスに自信を深めた本人側は年俸300〜400万ユーロ規模の大幅引き上げを要求。両者の溝は埋まらず、ローマは交渉を打ち切り、事実上の放出を容認した。(calciomercato.com)
ローマが交渉から退いた時点で、ユベントスは素早く動いた。チェリク側のエージェントとの交渉を早期に完了させ、選手が要求した水準の年俸で合意。フリートランスファーで移籍金不要という条件は、ユベントスにとって財務的に非常に有利な補強となった。
チェリクは2022年夏にリール(フランス)からローマに加入。リールはその際、将来の売却時に15%の連帯金を受け取る条件で選手を放出していたが、今回のフリートランスファーではリールへの追加支払い義務は生じない形での移籍となった。
なお、ローマはチェリクの後継として右サイドバック補強が求められる状況となり、ウェスレー(右サイドバック)の起用や左サイドのアンヘリーニョ(回復中)の状況も踏まえた補強が必要になると見られる。
戦術的考察

TheSportsDB / Zeki Çelik
チェリクは身長180cm、右サイドバックを主戦場とし、右ミッドフィールドやセンターバックもこなせるユーティリティ性を持つ。ローマでの直近シーズンはガスペリーニ監督のもとで3バック・5バックシステムに組み込まれ、ブラケットないしウィングバックとして起用されるなど、複数ポジションで中心的な役割を担った。
ユベントスがどのシステムを採用するかによって彼の機能性は変わるが、右サイドバックとしての攻守両面でのクオリティは折り紙つきだ。セリエAでの106試合出場という豊富な経験(Transfermarkt)はリーグへの即時適応を保証するものであり、新天地での序列争いでも上位に入ることは間違いない。また、フランス・リーグ1時代のリールでも118試合に出場しており、欧州カップ戦(ヨーロッパリーグ43試合、チャンピオンズリーグ13試合)での経験値も高い。ユベントスが欧州戦線を見据えた際にも計算できる存在となる。
数字で読む
Transfermarktのデータが示すチェリクのキャリアスタッツは充実している。
| 大会 | 出場数 | ゴール | アシスト |
|—|—|—|—|
| リーグ1 | 118 | 6 | 17 |
| セリエA | 106 | 1 | 5 |
| ヨーロッパリーグ | 43 | 2 | 5 |
| チャンピオンズリーグ | 13 | 0 | 1 |
| キャリア合計 | 398 | 13 | 29 |
現在の市場評価額は1400万ユーロ(2026年5月29日時点)。キャリア最高値は2019年12月時点の2000万ユーロであり、現在はそこから下がってはいるが、フリートランスファーという取得コストを考えれば、ユベントスにとっては純粋に市場価値以上のリターンが見込める補強だ。
トルコ代表としての国際Aマッチ出場数は63試合・3得点。2026年ワールドカップ本大会でもグループDでの試合に出場するなど、最前線での活躍を続けている。29歳というピーク年齢での3年契約は選手・クラブ双方にとってバランスの取れた合意といえる。
編集部の見解
今回のチェリクのユベントス移籍は、フリートランスファー市場の活用という観点でユベントスの巧みさを改めて示した案件だ。ローマが年俸交渉を打ち切り、実質的に選手を手放した瞬間にユベントスが素早くアプローチし、選手の要求水準の年俸を飲んで引き抜いたこの一連の流れは、ローマの失策とユベントスのスピード感の対比として語られるべきだ。
移籍金を節約した分、ユベントスは別戦力の補強資金に充てられる。29歳・3年契約という条件は経験値とコストパフォーマンスを両立しており、即戦力として2026-27シーズン開幕から右サイドバックのファーストチョイスになるはずだ。セリエA106試合というリーグ経験は新加入ながら初日から戦力として機能できることを意味する。
一方、ローマにとってはこれが痛い教訓だ。好調な選手の自信が高まる前に早期更新交渉を進めるべきだった。交渉の遅延と低すぎる初期オファーが競合クラブに漬け込まれる隙を与え、同じリーグの強豪に優秀な選手を無償で流出させる最悪の結果を招いた。ローマは今夏、右サイドバックの補強を最優先課題として取り組まなければならない。
今後の注目点
まず、ユベントスにとってはチェリクのシステムへの組み込み方が焦点となる。2026-27シーズンのセリエA開幕は8月23日(フロジノーネ戦)が予定されており(Transfermarkt)、プレシーズンの段階で監督との連携をどれだけ深められるかが序盤戦のパフォーマンスを左右する。
ローマ側には後継補強の動きが注目される。右サイドバック不在という明確な穴を夏の移籍ウィンドウ中に埋められるかどうか、早急な補強が求められる。移籍ウィンドウの動向次第では、チェリク放出の影響がシーズン序盤のローマの成績に直結しかねない。
また、チェリクは今夏のワールドカップでトルコ代表としてプレー中であり、大会でのパフォーマンスがユベントスでの初シーズンへの評価・期待値にも影響を与える。世界の舞台での活躍が続けば、1400万ユーロという市場評価額の上昇も十分に考えられる。
情報源
- La Stampa – Celik via a zero dalla Roma: bloccato dalla Juventus, c’è l’accordo sullo stipendio – calciomercato.com
- Zeki Çelik – Stats 26/27 – Transfermarkt
- Zeki Çelik – Player profile 26/27 – Transfermarkt