マンチェスター・ユナイテッドが今季リーグ戦で苦しんでいる。マイケル・キャリック監督のチームはブライトンとのホームゲームで逆転を許して敗れ、続くフルアム戦でも終盤まで劣勢に立たされた。そんな中、ローン復帰したマーカス・ラッシュフォードの「仏頂面」ぶりが注目を集め、元チームメイトのゲイリー・ネビルからは「みじめ」とも形容すべき言葉が飛び出した。今季のユナイテッドが抱える問題の深さを整理する。
マン・ユナイテッド vs フルアム——辛抱の引き分けとネビルの怒り

Egghead06 / Wikimedia Commons (CC BY 4.0)
見どころ: ユナイテッドが終盤のマテウス・クーニャのゴールで1-1に持ち込んだフルアム戦は、試合内容と結果の乖離が際立った一戦だった。
試合の焦点: 前半は膠着状態が続いたが、後半開始直後の約15分間でユナイテッドの組織は完全に崩れ、リサンドロ・マルティネスのオウンゴールでフルアムが先制。試合を通じてフィジカル面と運動量の不足が露わになった。
ゲイリー・ネビルはスタジアムでの観戦後、「5歳からユナイテッドを見てきたが、あの15分間は最悪だった。まったくひどい。あれほど頑張っていないのは見たことがない」と言い切った。これはネビルにとっても異例の激しさのコメントだ。(Sky Sports)
一方、キャリック監督は試合後に押し返した点を強調。「終盤の戦い方を見ればフィットネスの問題はない。むしろ最後は強くプレーできた」と反論した。クーニャ自身は「前半の入りは彼ら(フルアム)の方が我々よりエネルギーがあった。それは受け入れられない」とBBCのインタビューで認め、ベンチを庇うわけでもなく正直な言葉を口にした。(BBC Sport)
さらにファンはキャリック監督がコビー・メイヌーを残り11分でベンチに下げた采配をブーイングで批判。「選手交代には反応が出る。メイヌーとも試合後に話し、彼は問題ない。ファンが感情的になるのも当然だ」とキャリックは語ったが、サポーターの不満が一段と高まっているのは明らかだ。
マーカス・ラッシュフォードの「仏頂面」問題
今季のユナイテッドを語る上で避けて通れないのが、ラッシュフォードの存在感だ。ローン期間を経てオールド・トラッフォードに復帰したラッシュフォードは、メディアからは「glum-faced(仏頂面)」と揶揄され、「裏で何かある」という見方も広がっている。(Football365)
BBCのマン・ユナイテッド担当記者サイモン・ストーンは「ラッシュフォードは復帰後に活気を見せているが、まだノーゴール」と指摘。かつてクラブ最大の期待株だった選手が、今や不満のシンボルとして語られる状況は、ユナイテッド凋落の縮図とも言える。(BBC Sport)
ネビルを筆頭とする元チームメイトたちは、キャリック監督がいつまでもパフォーマンス不振の選手たちを庇い続けることへの不満を露わにしており、「キャリックはもう選手を守るのをやめるべきだ」というメッセージを明確に発している。
戦術的考察
今季のマン・ユナイテッドが抱える問題は、戦術的な設計よりも選手のパフォーマンス面の欠如にある。BBCの報道によれば、クーニャやディオゴ・ダロットを含む複数の主力が昨季比で大幅に出来が落ちている。さらに、今夏に獲得した選手(アンドレイ・サントス、ユーリ・ティーレマンス)がいまだフィットしておらず、主要補強として期待されたカルロス・バレバも負傷で離脱中だ。
左サイドバックの問題は象徴的だ。ルーク・ショーが負傷欠場している状況で、パトリック・ドルグもヌサイル・マズラウイも代役として安定感を欠いている。ウィングからサイドバックまでの左サイドのライン全体が機能不全に陥っており、この穴をどう埋めるかがキャリック体制の試金石となっている。
加えて前線のラッシュフォードは復帰後に動きの鋭さは見せているものの、得点という形に結びついていない。試合終盤の重要な局面で得点パターンを作れない前線は、チームに重くのしかかっている。キャリック監督はゲーゲンプレスを志向しつつも、選手が思うように走り込まない状況では戦術を機能させることが難しく、フィジカルと戦術の両面から再整備が急務だ。
数字で読む
- フルアム戦でユナイテッドはクーニャの89分の得点で1-1に引き分けた
- 今季ユナイテッドはブライトンに3-2で敗れた(これはブライトンが50年以上ぶりにオールド・トラッフォードで2点差をひっくり返した試合)
- マンシティ戦も10人に減ったシティ相手に敗北——2ホームゲームを含む4日間で2連敗
- ラッシュフォードは復帰後まだ無得点
- £70m(7000万ポンド)のバレバが負傷離脱中、£48mのサントスも未だ本領発揮できず
これだけの投資額を積み上げながら、今季の開幕での躓きは深刻だ。特に高額補強選手が軒並み機能していない現状は、フロントの強化方針そのものへの問いかけにもなっている。(BBC Sport)
編集部の見解
キャリック監督の姿勢には一定の評価ができる。「チームの成績は俺の責任だ」と公言し、逃げない姿勢を保っている点はプロフェッショナルだ。しかし問題は、責任を取る覚悟ではなく、問題を解決する手段を持っているかどうかだ。
フィットネス不足の疑惑をキャリック本人は否定するが、クーニャ自身が「前半は向こうの方がエネルギーがあった」と認めた事実は重い。監督がメディアに向かって問題を否定し続けている間に、選手自身が問題を認めているのだ。これはコーチングスタッフとプレーヤーの認識に乖離がある証左であり、それこそが最大の危機信号だ。
ネビルの言葉を「ノイズ」として遮断することはできても、スタンドから沸き起こるブーイングを無視するわけにはいかない。ファンはキャリックを試しに来た今季、明らかに辛抱の限界に近づきつつある。残り試合でキャリックが選手個々の奮起を引き出せなければ、クラブの「見守り」方針も転換を迫られる可能性は十分にある。
今後の注目点
直近の国際Aマッチウィーク明けが、今季の流れを決定づける分岐点になる。今季序盤の2ホーム敗戦という現実を受けて、フロントがどれほどの「猶予」をキャリックに与えるかが焦点だ。バレバが復帰する国際ブレーク明け以降、補強選手が揃った状態でどのような内容を見せられるかは純粋な戦力評価の試金石となる。
また、ラッシュフォードが無得点状態を続けた場合、彼を先発で使い続けるかどうかという采配の問題も浮上する。ゴールの出た試合では「復帰成功」の評価に変わりうるが、このまま停滞すれば「裏で何かある」という憶測がさらに加速するだろう。
ネビルら元チームメイトの批判がどこまでエスカレートするかも要注目だ。ネビルは自身のメディアプラットフォームを持ち、その影響力は無視できない。キャリック包囲網が元同僚たちによって形成されつつある中で、マン・ユナイテッドがブレーク明けに白星を積み上げられなければ、季節が変わる前に監督交代論が現実味を帯びる。
情報源
- Marcus Rashford: Mystery of ‘glum-faced’ Man Utd star solved as there’s ‘something behind scenes’ – Football365
- Carrick sack deserved after red flag Man Utd comments in pre-season – Football365
- Man Utd: Michael Carrick defends players after Gary Neville comments – BBC Sport
- Carrick needs Man Utd’s players to step up – BBC Sport
- Gary Neville: Michael Carrick has got to stop defending Man Utd players after lacklustre draw at Fulham – Sky Sports