プレミアリーグの移籍ウィンドウが閉幕し、エバートンはその後遺症に苦しんでいる。フォラリン・バルーガンとの£4000万の移籍交渉がデッドライン直前に崩壊し、クラブは18名という極小スカッドでシーズンを戦うことを強いられた。デイビッド・モイーズ監督がメディアの前で胸中を吐露する一方、元マンチェスター・ユナイテッドのスターがフリーエージェントとしてクラブに提示されるという報道も浮上。移籍窓閉幕後の混乱が続くグディソンパークの現状を詳報する。
エバートン移籍窓の崩壊——バルーガン失敗と18名スカッドの現実

TheSportsDB / David Moyes
見どころ: フリー選手獲得の可能性と、モイーズ監督の率直な心境
今季のエバートンの移籍窓は、クラブ幹部への不満が噴き出す形で幕を閉じた。核心はモナコのフォラリン・バルーガンとの交渉失敗だ。医療検査で問題が発覚し、契約条件を再交渉してデッドラインシートまで提出したものの、バルーガン本人が移籍を拒否してその場を去った。(The Guardian)
この失敗の前にはすでに、ジョシュア・ジルクゼー(マンチェスター・ユナイテッド)へのローン打診が断られ、タミー・エイブラハム(アストン・ビラ)へのローン交渉も実らず、フルハムのケニー・テテとの£900万合意は相手クラブの補強失敗によって流れた。唯一決まった補強は、リヨンからアーセナル出身のエインズリー・メイトランド=ナイルズを約£420万で獲得したことと、ジャック・グリーリッシュの加入のみ。(The Guardian)
資金を調達するためにイリマン・ンディアイェをマンチェスター・シティへ£6000万+最大£500万のアドオンで売却し、ベト(フィオレンティーナ、£1550万)、ティム・アイロエブナム(ハル、初期£1500万)、ネイサン・パターソン(トリノ、非公開)なども放出。攻撃面の核を手放しながら、その代替補強が実現しなかったという最悪の構図が生まれた。
その後、今季無所属のジェイミー・ヴァーディがショック補強候補として浮上しており、太陽紙はエバートンがフリー獲得を検討していると報じた。また、フットボール365は元マンチェスター・ユナイテッドのアントニー・マルシャルについてもクラブが打診を受けたと報告している。(Sky Sports) (Football365)
モイーズ監督の記者会見——「成功したければ全員が一致しなければならない」
注目の対決: 週末のマンチェスター・ユナイテッド戦(ヒル・ディキンソン・スタジアム)に向けた会見
モイーズ監督はBBCスポーツとのインタビューで、移籍窓の結果に失望していることを率直に語った。「もっと補強できなかったことが残念だ。バルーガンの件は誰のせいでもない。選手の医療検査で問題が見つかっただけだ」と話し、交渉の経緯に公平な見方を示した。(BBC Sport)
クラブの体制についても踏み込んだ発言があった。「成功を望むなら、全員が一致していなければならない。新オーナーはまだクラブに慣れている段階だ。お互いをもっと理解するようになれば、状況は改善する。何が必要かは分かっている。プレミアリーグのスカッドを作るのに何が必要かも、十分な経験から知っている」と述べた。(Evening Standard)
チェルシーがデッドラインデーにジェームズ・ガーナーへのオファーを出したという報道についても「完全に事実無根だ。どこからそんな話が来たのか分からない」と全面否定。締め切り時点でエバートンは18名の1軍登録選手しかいないという現実の中で、ガーナーを手放す余裕は最初からなかったとも示唆した。(BBC Sport)
アカデミーの若手選手について問われると、「彼らがステップアップできる準備が整っているかどうかは分からないが、怪我や出場停止でプッシュされることもある。チャンスを与えられなければ、何ができるか分からないものだ」と語った。
戦術的考察
エバートンが今季直面する最大の戦術的問題は、1トップのファースト・チョイスがシエルノ・バリーただ一人という「ストライカー不足」に尽きる。バリーはカラバオ杯のプレストン戦でハットトリックを記録し(Sky Sports)、プレミアリーグ開幕のクリスタル・パレス戦でもゴールを挙げており(ESPN)、今季ここまでの活躍は評価に値する。しかし一人のストライカーに依存するシステムは、負傷や出場停止が発生した瞬間に機能不全に陥る。
モイーズ監督が採用している柔軟なシステムでは、ミッドフィールダーのメルリン・レールが本職ではない右サイドバックを務めるなど、多くの選手が複数ポジションをこなす必要がある。監督自身も「小さなスカッドではフレキシブルに動ける選手が必要だ」と認めており、これはリスクの高い前提条件だ。
仮にヴァーディやマルシャルのようなフリーエージェントを獲得した場合、その選手の即戦力性と体のコンディションが鍵になる。チームが機能しているときに組み込むのか、緊急の補強として迫られるのかによっても、戦術的なフィット感は大きく変わる。現状のシステムはストライカーが一人で前線に張る形を想定しており、バリーとは異なるタイプの選手が入れば戦術の修正も必要になる。
数字で読む
今季のエバートンの移籍収支を整理すると、売却総額はンディアイェ(£6500万)、ベト(£1550万)、アイロエブナム(初期£1500万)などを合わせ、相当な規模の資金が流入したことになる。一方、獲得費用はメイトランド=ナイルズの約£420万のみ。ハイダン・ハックニーの加入も確認されているが、大部分は売却超過の構造になっている。
攻撃面の数字も厳しい。前シーズンはベトとバリーを合わせて18ゴールしか記録できなかった(ESPN)。ンディアイェを売却したうえでフォワードの補強が実現しなかったことで、今季の得点力は前季を大きく下回るリスクがある。バリーは開幕2試合でゴールを挙げているが、プレミアリーグでシーズンを通してゴールを積み上げてきた実績は限られており、一人に頼る構造は統計的にも脆弱だ。
スカッドの数も深刻で、1軍登録選手がわずか18名というのはプレミアリーグでは異例の少なさだ。平均的なプレミアリーグのスカッドは25名前後で構成されており、負傷者が2〜3名出ただけでシステムが崩壊する可能性がある。
編集部の見解
エバートンの今回の移籍窓は、単なる不運ではなくクラブとしての構造的な機能不全を露呈した。ンディアイェを£6500万で売り、ベトも売り払っておきながら、獲得できた最も高い移籍金の補強が£420万の29歳――これは戦略的失敗と断言するしかない。バルーガンの失敗が「誰のせいでもない」という監督の発言は寛大だが、複数の交渉が同時に崩れた事実は、クラブの交渉力と計画性に深刻な疑問符を打つ。
ヴァーディやマルシャルといったフリー獲得の噂は、一時的な「絆創膏」にすぎない。この二人を獲得したとしても、プレミアリーグを18名で戦うという根本的な問題は解決しない。むしろ問題は単純な人数ではなく、スカッドの質の深刻な低下だ。モイーズ監督が「新オーナーとの関係がまだ発展途上」と言及したことは、移籍予算の権限と決定プロセスに内部の齟齬があることを示している。このズレが修復されなければ、冬の移籍市場でも同じ混乱が繰り返される。
今後の注目点
最大の焦点は今週末のマンチェスター・ユナイテッド戦だ。この試合がヒル・ディキンソン・スタジアムで行われる(BBCラジオ5ライブでライブ中継)。ユナイテッドはジルクゼーのローン移籍をエバートンに拒否した経緯もあり、両クラブの因縁が複雑に絡む一戦となる。バリー一人の前線でマイケル・キャリック率いるユナイテッドの守備をどう崩すかが試金石になる。
フリー移籍市場での補強についても、ウィンドウが閉まっていても移籍登録外の選手(フリーエージェント)は随時契約可能なため、ヴァーディやマルシャルへの具体的なアプローチが今後数週間以内に動く可能性がある。モイーズ監督が「成功するためには全員の一致が必要」と発言したことで、新オーナーと監督の方向性が実際に揃っているかどうかも、今後の記者会見での発言から読み取るべきポイントだ。加えて、ジェームズ・ガーナーの負傷状況とクリスティアン・ノーゴードの回復状況も今後のスカッド運用に直接影響する。18名体制では一人の長期離脱が致命的になりかねないだけに、週次の負傷情報から目が離せない。
情報源
- Football transfer rumours: Jamie Vardy to São Paulo or Sheffield Wednesday? – The Guardian
- Everton transfer news: Toffees eye shock move for free agent Jamie Vardy after Folarin Balogun deal falls through – Paper Talk – Sky Sports
- Everton 2-0 C Palace Game Analysis – ESPN
- Everton left with only one striker after Balogun deal collapses late on deadline day – The Guardian
- Preston North End 0-4 Everton: Thierno Barry scores hat-trick – Sky Sports
- Everton reach decision on signing former Man Utd record-breaker as free agent – Football365
- David Moyes confirms if Chelsea made last-gasp Deadline Day bid for Everton star – Evening Standard
- David Moyes press conference: Everton vs Man Utd – BBC Sport
- David Moyes press conference: Bournemouth vs Everton – BBC Sport
- Everton close in on Man Utd striker as Folarin Balogun deal risks complete collapse – Football365
