2025年夏に移籍金1810万ポンドでロイヤル・アントワープからマンチェスター・ユナイテッドに加入したセンヌ・ラメンスが、プレミアリーグで確固たる地位を築きつつある。23歳のベルギー人GKは加入初年度から正GKの座をつかみ、2025-26シーズンはプレミアリーグで32試合に出場。さらにクラブ移籍後にはベルギーA代表デビューも飾り、ユナイテッドが見込んだ「将来への投資」が着実に実を結んでいる。マイケル・キャリック体制下での新シーズンを前に、ラメンスがオールド・トラッフォードの守護神として定着した経緯と今後の展望を多角的に分析する。
センヌ・ラメンスの移籍と定着の経緯

TheSportsDB / Senne Lammens
見どころ: 加入わずか1年で正GKに定着したラメンスの成長軌跡と、ユナイテッドのGK問題解決への道筋。
移籍の経緯: ユナイテッドはロイヤル・アントワープとの間で初期移籍金2100万ユーロ(約1810万ポンド)にアドオンを加えた条件で合意し、ラメンスは5年間の契約を結んだ。当初はアストン・ビラのエミリアーノ・マルティネスも候補として挙がっていたが、最終的にクラブはより若いラメンスを選択した。(BBC Sport)
背景: 加入前のユナイテッドはGK事情が深刻だった。当時の指揮官ルベン・アモリムは「今この瞬間、マンチェスター・ユナイテッドのGKであることは難しい」と率直に語っていた。アルタイ・バインドゥルはリーグ開幕のアーセナル戦でエラーを犯し、アンドレ・オナナもリーグカップのグリムスビー戦で12本のPKを1本しか止められないという失態を演じていた。(BBC Sport)
ラメンスのキャリア: クラブ・ブルッヘ出身のラメンスは2023年にフリーでアントワープへ移籍し、同クラブで64試合に出場。2023年のベルギー・スーパーカップ優勝も経験した。アントワープでは昨シーズン(移籍前)にベルギー・プロリーグで30試合に出場し7クリーンシートを記録している。(BBC Sport)
A代表デビュー: 加入時点ではベルギーA代表未経験だったラメンスだが、その後代表デビューを果たし、Transfermarktの最新データ(2026年6月3日更新)ではA代表2キャップを記録している。将来的なチボー・クルトワの後継者候補として期待されている存在だ。(Transfermarkt)
プレミアリーグでの活躍
25-26シーズンの実績: ラメンスは加入1年目のプレミアリーグで32試合に先発し、8クリーンシートを達成。直近5試合の成績を見ると、ブライトン戦(3-0勝利)、ノッティンガム・フォレスト戦(3-2勝利)、サンダーランド戦(0-0引き分け)、リバプール戦(3-2勝利)、ブレントフォード戦(2-1勝利)と安定したパフォーマンスを見せている。(ESPN)
ピッチ内外での評価: エバートン戦での1-0勝利後、当時の指揮官デイヴィッド・モイーズは「bloody brilliant(本当に素晴らしかった)」と絶賛した。マイケル・キーンの強烈なロングシュートをセーブした場面だけでなく、六ヤードボックスへのコーナーキックを確実に処理する安定感が特に評価された。(BBC Sport)
本人のコメント: ラメンスは自身のプレースタイルについて「派手なプレーばかりが求められるわけではない。チームメイトに信頼してもらうことが大切で、それがチームを助けることになる」と語り、堅実さを重視するスタンスを示した。また、BBCのインタビューでは「私は普通の人間。子供たちに夢を与えたい」と語り、ピッチ外でも謙虚な姿勢を貫いている。(BBC Sport)
元選手からの評価: 元ユナイテッドDF、リオ・ファーディナンドはESPNの取材に対し「ラメンスはユナイテッドで10年間活躍できる選手だ」とコメントしており、長期的な期待の大きさを示している。(ESPN)
戦術的考察
ラメンスがユナイテッドに与えた戦術的な影響は、単なるGK交代以上の意味を持つ。193cmの長身を活かしたハイボール処理と、コーナーキックやクロス対応の安定感は、前任者たちが課題とされていた「守備の不安定さ」を大幅に改善した。
特に注目すべきは、彼のビルドアップへの関与だ。現代の戦術トレンドにおいてGKは単なる守護神ではなく「最後尾のフィールドプレーヤー」としての役割が求められる。ラメンスはクラブ・ブルッヘのアカデミー出身として技術的な基盤をしっかりと持っており、足元のプレーにも一定の水準がある。アモリム体制(当時)が採用していた3バックシステムでは、GKがライン背後のスペースをカバーする役割も求められるため、フィジカルと反応速度の高さは大きなアドバンテージだ。
また、ラメンス自身が「アイドルはマヌエル・ノイアー」と明言していることも示唆的だ。ノイアーが体現した「スウィーパーキーパー」の概念──前へ出てDFとして機能するスタイル──が彼の目指す姿であり、プレミアリーグの激しいフィジカルバトルにも順応できている。背番号31をまとったラメンスがユナイテッドの守備の柱として機能することで、CBやSBはより高い位置でのプレーに集中できるという構造的な恩恵も生まれている。
数字で読む
ラメンスの2025-26シーズンのスタッツを整理すると、プレミアリーグ32試合出場・39失点・8クリーンシートという数字が残っている。全大会合計では37試合・45失点・8クリーンシートだ。FAカップでは1試合に出場し2失点を喫した。(Transfermarkt)
移籍金の観点では、当初の契約金は2100万ユーロ(約1810万ポンド)。Transfermarktの最新評価額(2026年6月3日時点)は3500万ユーロに達しており、移籍からわずか1年弱で市場価値が約67%上昇した計算になる。これはプレミアリーグでの活躍が国際的に評価されていることを如実に示している。(Transfermarkt)
契約は2030年6月まで残っており、クラブにとっても長期的に安定したGK確保という観点で理想的な状況だ。現在のチーム登録背番号は31番で、ユナイテッドのスタメンGKとしての地位を確立している。(Sky Sports)
編集部の見解
ラメンスのユナイテッド加入は、近年のクラブにおける数少ない「完全に成功した補強」の一つだと断言できる。1810万ポンドという移籍金は、プレミアリーグの主力GKとしては極めてリーズナブルな投資だった。エミリアーノ・マルティネスではなくラメンスを選んだ判断も正解だ。マルティネスは実績こそあるが年齢と市場価値を考えれば費用対効果の面で劣る。23歳で伸びしろのあるラメンスを選んだことで、クラブは2030年以降も見据えた長期的な守備の安定を手に入れた。
また、ベルギーA代表デビューを果たしたことは、ラメンスの成長が個人レベルでも確かなものであることを証明する。将来的にチボー・クルトワの後継者となれば、ベルギー代表の守護神としてもユナイテッドとの相乗効果が期待できる。
マイケル・キャリック新監督体制においても、ラメンスは正GKとしてシーズンに入るべきだ。彼を軸に据えることがチームの安定につながり、前線への信頼感の醸成にも直結する。守備の安定こそがユナイテッドの上位進出に不可欠な要素であり、その要石はすでにゴールマウスに立っている。
今後の注目点
まず最大の注目点は、マイケル・キャリック新監督の下でラメンスが引き続き正GKとして起用されるかどうかだ。ESPNのデータによると、次戦は2026-27シーズン開幕戦となるハル・シティ戦(8月22日)が予定されており、新体制でのスタートラインとなる。
個人レベルでは、ベルギーA代表として2026年ワールドカップ(開催中)のメンバー選考にどう絡むかも見どころだ。すでに2キャップを獲得しており、クルトワとの関係次第では出場機会を得る可能性がある。
契約面では2030年まで残っているため、短期的な移籍リスクは低い。ただし、現在の市場価値が3500万ユーロに達していることから、今夏の移籍ウィンドウで大型オファーが届く可能性も排除できない。ユナイテッドとしては何があっても彼を手放すべきではなく、早期の契約延長交渉に入ることが賢明だ。また、2026-27シーズンのチームパフォーマンス全体における守備指標(失点数・クリーンシート数)の改善がラメンスへの評価をさらに高める鍵になる。
情報源
- Senne Lammens: Man Utd to sign Royal Antwerp keeper for £18.1m – BBC Sport
- A ‘normal guy’ doing ‘brilliant’ things – Lammens on life at Man Utd – BBC Sport
- Will Senne Lammens join Manchester United? – Rumour mill – Transfermarkt
- Senne Lammens – Squad number history – Transfermarkt
- Senne Lammens – Manchester United Goalkeeper – ESPN
- Senne Lammens – Belgium | Player Profile – Sky Sports
- Manchester United close on signing Antwerp goalkeeper Senne Lammens in €20m deal – The Guardian